職人に聞く「匠工房」の魅力、IT業界から転身後10年目の佐久川さんインタビュー
最新の技法や設備を取り入れ、琉球ガラスのパイオニアでありつづける「匠工房」。
工房に勤める職人さんには、どんな人がいるのでしょうか。
今回は「匠工房」で10年ガラス作りを続けている佐久川さんに、お話しを伺いました。
琉球ガラスの技法や同じ工房スタッフへの思い、ガラス作り体験を通したお客様との思い出を聞かせてもらいました。ぜひ最後までご覧ください。
琉球ガラス職人を目指したキッカケ
ーー佐久川さんが琉球ガラス職人を目指したキッカケを教えてください。
求人誌の広告を見たのがキッカケでした。「こんな仕事も載っているんだ」と驚いたのを覚えています。
そこで興味を持ち、初めて琉球ガラス作り体験をやってみて「なんなんだこれは!?」と物作りの感覚に魅了され、応募しました。
ーー求人誌を見た当初は、どんなお仕事をされていたんですか?
その頃はIT関連の企業に勤めていました。高校を出た後IT関連の専門学校を卒業し、そのまま広告代理店のオペレーターやコールセンターで勤めていたんです。
ーーITから職人は大きな変化ですね。それからずっとガラス職人ですか?
いいえ、当時は匠工房とは別の工房に勤めていたのですが、30歳という年齢に近づくにつれて将来の不安なども大きくなり、一度IT関連の仕事に戻るという選択をしました。
でも、IT関連の仕事はやっぱり「違うな」と感じてしまいました。
仕事にのめり込んで集中する感覚や、時間を忘れて作業する感覚があったのは琉球ガラス作りの方だったんです。
そうしてまた琉球ガラス職人に戻る決意をして、匠工房さんで働かせてもらうことになりました。2022年9月でもう10年になります。
琉球ガラス職人のベテランとは?
ーー10年ともなると、もうベテランですね
いえいえ!僕はまだまだです。匠工房にはこの道30年以上のベテラン職人さんも3名いますし、代表も職人ですから。
ーー琉球ガラス職人のベテランは、他の職人さんとどう違うのですか?
やっぱり引き出しの数でしょうか。琉球ガラスは作る工程ですぐに固まってしまうので何度も焼き直しながら作ることになります。
機械のトラブルとかで若干火が弱かったりしてもなんとかするとか、うちは機械や道具の数も多いのでそれらを使いこなすようになるにもやっぱり時間がかかります。
琉球ガラス作りってメンタルもけっこう出ると思っていて、自分のコンディションによっては「あれ?いつもやっている工程なのになんか違うな」みたいな違和感があったりもするんです。
そういったトラブル時も、ベテランになればなるほど安定します。
ーーガラス作りはメンタルも関わるんですね。ちなみに一般的にベテランと呼ばれるのは何年目くらいの職人さんなのでしょうか?
そういう年数ですか……。
やっぱりよく言われるのは、10年と言われています。
ーーそれなら佐久川さんはやっぱりベテランですね!
いえいえ!僕はまだまだです。笑
匠工房の特徴
ーー別の工房で働いた経験のある佐久川さんから見た「匠工房の特徴」はなんですか?
うちは代表が経営者でもあり職人でもあるので、職人の気持ちをわかってくれるので助かっています。
代表自身が気になる製法とかを見つけたら、すぐに道具を揃えてくださったりします。新しい技法は勉強になりますね。
また年に数回のイベントに向けて、時間をもらって自分の作品を作らせてもらえます。
自分の考えていたイメージを形にできるチャンスがあるのはありがたいですし、普段商品では使わない技法に挑戦してみようと思える時間にもなっています。
やってみないとわからない部分もあるので、時間をいただけるのはとてもありがたいです。
ーー普段とは違う、新しい技法に挑戦できる楽しみがあるんですね。
そうですね。僕たちスタッフはよく動画を見たりして新しい技法を勉強しています。海外の職人さんが動画をアップしてくださっているので、それらをみんなで見ていますね。
ーー動画で技術が学べるんですね。それらを一緒に共有するって、スタッフはみなさん仲がいいのでしょうか?
仲は良いほうだと思います。みなさん一人一人のために動いてくれたり、意見もいろいろ言ってくれるので頼もしいメンバーですね。
調子が悪くて作業が進まないメンバーがいたら声をかけたり、逆にそうしてもらえることもあります。
ーー助け合っているんですね。てっきり職人は「見て盗め」の厳しい世界だと思っていました。
昔はそう言う時代もあったようですし、他の工房ではまだそうかもしれません。
この道30年以上のベテラン職人さんによれば、昔は道具が飛んでくるのは当たり前だったそうです。
しかし今の先輩方が「自分達の後輩にはそういう思いはさせたくない」と思ってくださっているおかげで、助け合って仕事をしています。
匠工房の琉球ガラス作り体験について
ガラス作り体験で関われる工程が多いのも、うちの特徴のひとつかもしれません。
ーー工房によって関われる範囲って変わるんですか?
変わります。ガラスを吹く作業だけのところもあったりしますが、うちはガラスをくくる(ガラスを挟む)工程からも関われます。
またお客様が選べるデザインも豊富ですし、それぞれ工夫されているので仕上がりもいいんです。
ーーお客様にとって嬉しいことばかりですね。職人としては手を止められて困ったりはしないんですか?
体験のお客様がいらしたときは、スタッフ同士で作業を交換したり助け合っているので大丈夫です。
僕としても、体験のお客様の反応はとても刺激になります。
自分たちは普段からガラスを触っているので当たり前になってしまっていることもお客様は初めてで、体験のちょっとしたリアクションが新鮮なんです。気分も変わりますね。
ーー体験のお客様との思い出で、特に印象に残っているものはありますか?
ちょうど数ヶ月前に来られたお客様なんですが、10年前にも来られていて、当時はカップルだったんです。そのお二人が、10年後に夫婦になって体験に来てくださりました。
10年前に担当したのも自分で、その当時のお写真を見せていただいた時はすこし感動しました。
ーーとても素敵な話ですね!
旅行のお手伝いをしていると思っているので、ガラス作りの体験や商品が沖縄を思い出すキッカケになれたら幸いかなと思っています。
職人を募集中
琉球ガラス匠工房では、職人の募集をしています。
少しでも気になる方はお気軽にお問い合わせください。
取材編集者:小橋川 遥(チキン@ライター)
生まれも育ちも沖縄。現在も沖縄で活動するフリーライター。
「商品やサービスをそれを必要とする人に届ける」をコンセプトに取材や商品紹介などの記事を作成する。